2026年6月中旬
三日目。シンガポール旅行の最終日は晴天に恵まれたので、朝からマーライオンを観に行った。
日本ではかつて世界三大がっかりスポットの一つとして知られていたマーライオン。さぞかしがっかりさせてくれるのだろうと期待して訪れてみたのだが、対岸にマリーナベイ・サンズを望む白亜のマーライオンは、想像よりも大きくて立派で、吐き出す水量も十分だった。全然がっかりしなかったので、逆にがっかりした。
後日、ネットでマーライオンについて調べてみたところ、「がっかり」と言われた主な理由は、
・設置場所の関係で正面から像を見られなかったこと
・ポンプの故障で水がたびたび止まっていたこと
以上の二点が大きな原因として挙げられていた。現在では移設され、水も常時吐き出すように改善されているため、「がっかりスポット」とは言えない場所へ様変わりしているとのこと。
マーライオン観光を満喫した後、我々はRaffles Place Parkまで歩き、Ya Kun Kaya Toastに入った。フレンチトーストと蒸し食パンを注文したのだが、どちらも美味しかった。
朝食の後はウェスティン シンガポールに戻ってプールで泳いだ。プールサイドではレズビアンカップルがスマホで互いを撮り合っており、シャッターを切るたびに「Wow, super sexy!」「Gorgeous!」と褒め言葉を掛け合っていたので、二人とも素晴らしいカメラマンだと思った。
午後はLau Pa Satというホーカーに立ち寄った。広大で清潔なフードコートといった感じだが、エアコンがないため、暑さに弱い人には少し厳しい場所という印象を受けた。
我々はここでは飲食をせず、友人がお勧めしてくれた店へバクテーを食べに行った。NG AH SIO Bak Kut Tehという店である。バクテーはシンガポールのガイドブックに必ず載っている名物料理らしいが、食べてまず思ったのは「スープに胡椒が効き過ぎている」だった。ただ、油条をスープに浸して食べると、あら不思議、めちゃくちゃに美味しかった。「煮込まれて柔らかくなった豚肉よりも、スープを吸った油条の方が美味しい」というのがおれの感想である。バクテー二杯、米、油条、ソフトドリンク二杯を頼んで43.76SGD(5,674円)だった。
バクテーを食べた後、隣のコンバット ドリアンに入った。
おれは今回の旅で、シンガポールでドリアンを食べることを目的の一つにしていた。過去に日本、タイ、ベトナムで三度ドリアンを食べたことがあるのだが、そのたびに「うっ……厳しい」という感想に終わっていた。でも、おれにはドリアンが大好きだと豪語する友人がいて、彼女の話を聞くたびに、「おれは単に美味しいドリアンに出会っていないだけなのではないか」と思っていた。
シンガポールでは六月に完熟して自然落下したドリアンが多く出回るらしく、ドリアンへの再挑戦は六月にシンガポールで、と以前から決めていた。
ただ、「いざドリアン」と意気込んでコンバット ドリアンに到着したものの、丸ごと一個を恋人(ドリアン初体験)と食べ切る自信はなく、スタッフに「我々はスーパービギナーなのだが」と相談したところ、「さっき実をさばいて小分けにしたものがあるので、それを買えばいい。種類は猫山王だ」と教えてくれた。パックされたドリアンは26.00SGD(3,371円)だった。
恐る恐る口にしたドリアンだったが、まず「臭くない」と思った。これはかなり衝撃だった。過去に食べたドリアンは腐った玉ねぎのような刺激臭があり、毎回「うっ」と言葉を失ってきたのだが、今回食べたものは全然臭くない。
「臭くない」は正確な表現ではない。嘔吐を催すような匂いではなく、醤油や味噌をほのかに思わせる発酵香がある、と言えばいいのだろうか。口当たりは驚くほどクリーミーでねっとりしているが、重たいわけではない。マンゴーのような強烈な甘さではないものの、上品でしっかりとした甘みがあり、その中にほのかな苦みも感じられる。唯一無二の、特別感のある果物だった。すごく美味しかった。おれは、この旅でドリアンのことを好きになれたかもしれない。
恋人はドリアンに対して予備知識や偏見が全くなかったので、「美味しい、美味しい」と言って食べていた。
ドリアンは確かに美味しかった。ただ、その日は夜まで胃が張っているような、もたれているような感覚が続き、げっぷまでドリアンの香りだったのには少しまいった。調子に乗って食べ過ぎたのかもしれない。
コンバット ドリアンを後にした我々は、GrabでHaji Laneへ移動した。ここは若い観光客向けのにぎやかな通りという印象で、我々にはあまり合わなかったため、早々に退散した。
その後、ホテルへ戻って空港へ向かった。
空港にはJewel Changi Airportという巨大なショッピングモールがあり、ものすごい人混みだったが、買い物や食事は全てここで済ませられそうなほどの規模だった。モール中央にある、天井から流れ落ちる巨大な滝が実に見事だった。
そういえば、この旅では現金を一切使わなかった。支払いは全てクレジットカードで事足りた。













