神戸にゴッホ・アライブを観に行ったところ、三ノ宮のハナサククレープの方がおれの五感に刺さった話。

ゴッホ・アライブという展覧会が面白そうだと友人から聞いたので、兵庫県立美術館に見に行った。この催しは「芸術性とエンターテイメント性を兼ね添えた五感で楽しむ全く新しい没入型の展覧会」(引用:公式ホームページ)なのだそうだ。

展覧会は楽しかった。

楽しかったのだが、正直、感動レベルではなかった。

でもその原因は、おれが期待するものと展覧会の趣旨とに齟齬があったからである。

おれは『美術館に絵を観に行く』つもりで足を運んだのだが、この展覧会は『静かな展示室を忍足で歩いたり、遠くから絵を見たりといった、これまでの観賞方法は忘れてください。(中略)会場内に入った瞬間から、力強く、わくわくするような光、色、音の洪水が、あなたを日常の世界から連れ去り(後略)』ますというコンセプトだったらしい。

そうだったのか。

コンセプトを調べずに来たおれが悪いのだが、展示室に入った瞬間「音楽がうるさい。」と思ってしまった。

おれは、静かな展示室で貴重なオリジナル作品を見られるという感動を味わいたい、という古の観賞方法にしがみついている勢なのであった。ロートルなおれは変化についていけず置いてけぼりを喰らったが、新たな楽しみ方にケチをつけるのはよそう。みっともないから。

展覧会では大きなスクリーンに絵が映し出されるので、こういうタッチで描かれているんだ〜という発見があった。

ただ『ゴッホ本人は、作品がこんなに拡大されて観賞されることを想定して描いてないだろうな』とか、いらん事を考えてしまった。

でもこの展覧会の手法は素晴らしいと思う。オリジナル作品を移送しなくても良いので美術品の危機管理コストが発生しないし、スクリーンに投影できる環境さえあれば、作品を広く浅く観客に届けていくことが可能だ。おれは美術館じゃなくて、田舎のどデカいショッピングモールの屋内広場とかで展示するのが向いているんじゃないかと思う。美術館に行くのは大変だけど、買い物に来たついでにアートに触れられる、敷居の低い、日常に溶け込んでいるアート的な見せ方の方がしっくりくる気がする。好きな飲み物を買って、ベンチに座って、好きなタイミングで好きなだけ観ていられるような。真剣に向き合うというより気軽に楽しむ方が向いている展覧会だと思った。

展覧会を見た後、JR三ノ宮駅の近くを歩いていて行列を発見して並んで買った「ハナサククレープ」という店のクレープ。

めっちゃ美味しい。焼きたての極薄サクサクパリパリの生地。砂糖のほんのりとした甘味。直塗りバターの香りと塩味。ザラメのザクっという食感としっかりした甘さ。夢中で食べた。店員さんがSNSを見て来てくださったんですか?と聞いてくれて「いや、美味しそうだったので並んで」

2023年4月現在、この店を間借りして営業しているようです。

帰宅して恋人に「作品鑑賞をした感があんまりなくて、ゴッホの作品紹介のYouTubeを見たって感じだった。」と伝えたところ、恋人が展覧会のホームページを見て「あーはいはいチームラボみたいな感じね大体わかった。」と言っていた。

恋人は「だいたい分かった」が口癖で、だいたい分かったものについて積極的に経験しなくても良いという判断をすることが多い。でもおれは『知っている・想像できる』と『実際の体験』は別物だと思うし、なんなら実際の体験の方に価値があると思う性分なので、旅行先などで恋人と意見が分かれることがままある。

なので、今回は一人で見に行って良かったと思う。一緒に行ったら行ったで、恋人も楽しんだとは思うけど。

ゴッホ・アライブに行ったおれの感想

「誰かがゴッホの絵画を素材として作成したYouTubeチャンネルを良い箱で観た感じ。」