
洗浄を開始した後、
コップを入れたいと恋人が言う。
おれは「もう食器が入る余裕はない。無理。」と言ったが、
「それでも挑戦したい」と恋人が言う。
恋人はカトラリー用カゴの上に空間を認め、
そこにコップを置き、
洗浄を再スタートさせた。
おれが「コップの下にスプーンや箸があるから、
お湯が届かず洗えないのではないか」と意見すると、
「洗えている」と恋人が主張する。
中を覗くと
案の定
カトラリー類が邪魔をしてお湯がコップに届かない。
おれが「やはり洗えていないと思うがどうか?」と問うと、
「蒸気で洗えている」と恋人は主張する。
『お湯がかからなくても蒸気で洗えている?』
おれが「確かに100度近い蒸気なら殺菌はできると思う。
ただ、食洗機のお湯は沸騰する程熱くない。
であればコップに届くのは湯気だ。
例えば、アッツアツのお風呂の湯気にコップを晒したとする。
それで洗えたとするのは、無理があるのではないか」と言うと、
「そもそも食器はそんなに汚れていないから、
神経質になる必要はない」と恋人は言う。
食器を洗うとは。
おれは考える必要があるらしい。