バンコク旅行記30(サムイ島06) プライオリティパスで利用できるサムイ国際空港のブルーリボンラウンジが結構良かったこと。あと、恋人と喧嘩したこと。

2022年9月2日

今思えば、朝起きてからずっと恋人の機嫌は悪かった。フードコードで食べた牡蠣オムレツが原因で、もう一週間以上ひどい下痢に悩まされていることも知っている。幸いな事におれは未だこの旅で体調不良になってはいないが、恋人とのバンコク・サムイ島の二人旅、機嫌が悪い人間とずっと一緒にいるのは正直言って疲れる。

今朝も昨晩の残り物を食べているときに「美味しくない」と文句を言ってきた。美味しくない原因は、残り物をおれが冷蔵庫に入れたせいでご飯もおかずも冷えて固くなってしまったからだと言う。このヴィラに電子レンジがあればこの嫌なムードを少しは回避できたかもしれないが、残念な事に電子レンジはなかった。おれとしては食べ物を常温で一晩放置するのは衛生観念上良くないという判断だったし、ましてやここは南国のリゾートであって日本の冬のような室温ではない。冷蔵庫に食べ物を入れたのは、腹を下している恋人のためを思ってでもあった。

でも、おれの恋人はおれのそんな考えや行動に思い至る性格ではないので平気で文句を言ってくる。おれも言われっぱなしでは腹が立つので一応説明をしたが「、、、それでもだよ。とても食べられない。」と不貞腐れていた。

恋人の体調が悪いのは本当だし、まともに食べられるものがなくて苛々するのも分かる。だからここでおれが詰めても仕方がないと思い、嫌な気持ちのまま食事をすませた。恋人は食べ物にほとんど手をつけなかったので、おれが全部食べた。

恋人は体調が悪いながらもチェックアウト前にビーチに行きたいと言う。体力も無くなってヘトヘトなのだから、ヴィラのプールで泳ぐだけにしておいたら?と提案するも、このヴィラにずっと籠もっていたから(トイレの心配があった)外の思い出が欲しいと譲らない。だったらせめて広いプールにしてはどうか?あそこならビーチよりも距離的に近いしトイレもあると言うと、じゃあそこに行くと言うので荷物をあらかたパッキングしてから、プールでひと泳ぎした。

Wコーサムイともこれでお別れだ。

部屋の内線電話でバギーを呼び、フロントまで送ってもらう。チェックアウト時間に合わせてGrabで迎車の予約しておいたが、約束の時間の直前になってGrab側からキャンセルされたので、フロントでタクシーを呼んでもらった。空港まで400THB(1,604円)だった。サムイ島の空港でヨーグルトスムージーを飲む。この日も暑かったので最高に美味しかったが、下痢をしている恋人の腹には良くないと思う。でも美味しいと言って飲んでいた。

2つで250THB(982円:クレジットカード決済)
プライオリティパスでブルーリボンラウンジを利用した。

椎茸の出汁が効いた鶏肉の餡掛けと赤飯が美味しかった。恋人も安心して温かいご飯を食べていた。涼しいし、搭乗口も近いし、料理は美味しいし、最高。

ちょっとした点心もあって美味しかった。

バンコクまでのフライトで、後ろに座っている子供がおれの座席をガンガン蹴りまくっていたので不愉快極まりなかった。子供だから色々な事をコントロールする能力が未発達であることは重々承知している。だから子供に対しては我慢できるが、でも、その子供の隣に座っている親が一切注意しない事に対してはすごく腹が立った。腹が立つからといって何かしたり言ったりはしないけれど。

スワンナプーム国際空港からARLに乗ってマッカサン駅まで来たものの、そこからタクシーもGrabもBoltも全然つかまえることができなかった。仕方なくMRTとBTSを乗り継いで今日の宿(airbnbで予約した)まで移動する事になった。傍目から見ても恋人の疲弊は極限に達していて苛々しているのは分かっていたので、できるだけ励ます感じで明るく声をかけていたが、それに返事をすることもしんどそうであった。

宿の最寄り駅に到着して目的地の方角を確かめるためにおれが立ち止まって看板を見ている時、恋人がスマホでルート検索をして一人でさっさと歩き出したりと、とにかく恋人の態度が悪い。おれも恋人の不機嫌に付き合うのに疲れていたので、喧嘩になったらそれで構わないと思って勝手に歩き始めると、「そっちの方向であってるの?任せるからね!(間違えたらあなたのせいだという意味が含まれている)」と恋人が言ってくる。もう知らん。間違えていても知らん。どうでも良い。

ようやくairbnbで予約した部屋の前に到着したが、そこでも一悶着があった。予約完了時に送られて来た案内のPDFに、ドアの電子錠の暗証番号が記載されていなかったのだ。そこからオーナーにチャットで連絡を取り暗証番号を送ってもらうというタイムロスが発生した。

もちろん、部屋に到着する前に確認しておくべきことだった。だけど、なんかもう、おれは全部面倒臭くなっていた。この旅行も、不機嫌な恋人の相手をするのも。

トイレに行きたい恋人は当然怒り、どうして暗証番号を事前に把握していないのかとおれを責めてくる。おれも「自分のミス」だとは思ったが、それと同時に湧き上がった「案内のPDFは恋人と共有済みなのだから、気づかなかったのはお前のミスでもあるだろうが」という思いの方が優勢になってしまった。

幸いにもオーナーとはすぐに連絡が取れて暗証番号も教えてもらえたが、焦った恋人が6桁の暗証番号をタッチパネルで入力する際にミスタッチを繰り返し、数回開錠に失敗してしまったことでドアロックがかかってしまった。

今にしてみればちょっとしたコントみたいで笑えるな、と思うのだが、当時のおれたちは互いに余裕を無くしていたので雰囲気は最悪だった。恋人はトイレ我慢の限界に来ていたものだから「この部屋のオーナーに今すぐここに来てもらってよ!」とおれに怒ってくるのだが、おれはもう『こいつには付き合い切れないな』と思っていたから、恋人をシカトしたまま無言でオーナーと「どうやったら開きますかね」とチャットで相談していた。

2、3分でタッチパネルのドアロックが解けたので、今度は慎重にキーを入力するとすんなりとドアは開いた。

部屋に入った途端に恋人が「はー。やっと入れた(なかなか入れなかったのはお前の段取りが悪いという意味が含まれている)」と言ったので、とうとうおれは切れた。

まず手に持っていたゴミをゴミ箱に投げつけ、着ていた上着を床に投げつけた。

恋人はおれが怒りの感情を露わにした事に驚いたのか(おれは普段怒ると黙るタイプです)「そんなに怒らないでよ!!!」とキレ気味で言ってくる。

おれは「は?無理。何だあの態度。体調が悪いことは分かっているけど、だからといっておれにあんな態度をとって良い事にはならない。反省して謝らない限りは絶対に許さない」と返すと

恋人はワナワナしながら先ずはトイレに駆け込み、

用を足し終えて少し冷静になったのか

「ごめんなさい。余裕がなくてイライラしてたから。」

と言ってきたので

「分かった。ずっと体調悪くてそれでイライラしてたのも知ってる。よく頑張ったね。偉かったね。」と恋人に伝えた。

って、おれは恋人にとっての親代わりじゃないだよな。なんか対等じゃないんだよな。子供のしつけじゃん、こんなの。

恋人は未熟だと思う。この先、未成熟な恋人といつまで一緒にいる事ができるだろうかと考えてしまう。晩ご飯はフードパンダでデリバリーを依頼した。恋人は食べたがっていたカオマンガイを注文したのだけど、半分だけ食べてあとは残していた。依然としてお腹を下している。

一人になりたかったので、コンビニに行くと言って出かけた。

一人で歩いているとさっきの喧嘩のことを考えてしまう。おれはさっきの喧嘩に限らず、最近恋人に対して優しく接することができなくなってきたと自覚している。それは、彼の中に尊敬する部分を見出せなくなっているのが原因じゃないかと思う。手のかかる、未成熟な大人。そんな人間と一緒にいるのは正直しんどい。おれも未熟な人間ではあるのだが、しかし。

ヒトの未熟な部分を、未熟のまま、未熟であるからこそ可愛いと褒めて愛し続けるのは親の役割なのではないだろうか。恋人の役割ではないと思う。

でも、親の役割とか、恋人の役割とか、そんな決まりがないのは分かっている。結局自分がどうしたいかってだけだ。ただ『親がもう少し厳しくしつけておいてくれたら良かったのに』と、恋人の両親に恨み言を言いたくはなる。でも、それも的外れな愚痴であることを分かっている。やっぱり、おれが、どうしたいかってだけなのだから。