下呂温泉で友人にカミングアウトしようかと迷ったけど、結局できなかった話。

高校生の頃の同級生と下呂温泉に行った。おれは自分の性的指向を数人にしかカミングアウトしていなくて、この友人にもしていない。多分、親友と呼べるほど仲が良いのに、だ。

”多分”親友なんて、変な言い方なのは分かっている。”多分”と言わなければならないのは、自分がゲイだということを友人に伝えていないからだ。

とは言え、いつも思っている。今度こそ「おれはゲイなんだよ」と伝えようと。でもいつも言えない。

言えなくてもこの関係性は続いていくし、例え言ったとしても友人関係が終わるわけがない。だから言っても言わなくても、大した問題じゃないんだ。もし友人が面と向かって「○○(おれのこと)はゲイなの?」と聞いてきたら、その時は堂々と「そうだよ。おれはゲイだよ」って言おう。そうしよう。

そう思いながら、もう何年も経っている。

この関係性が壊れるわけないっていうのは、おれがそう思いたいだけで、本当は友情が形を変えてしまうのではないかと思ってすごく怖い。

友人はお酒をすごく飲む。酔って記憶が曖昧になることがままあるので、友人が酔っている時を見計ってカミングアウトしようかと思うことがある。今回の旅も、友人は旅館で大量にお酒を飲んでいたから、カミングアウトのチャンスかも知れないと思ったりした。酔っ払った友人の反応がもし微妙だったら、翌朝になって「そんな話したっけ?」と押し通せば、、、カミングアウトがなかった事になるんじゃないかと思ったりもした。

でも、そんなのは不誠実だよな、って思う。言えないのは自分の勇気がない。たったそれだけのことなのに。

自分が話した内容を、相手の反応を見て取り下げたり撤回したりなんてできない。そんなのは不誠実な人間のすることだ。そんなことを考えて、今回も結局言えずじまいだった。

本当は、おれが一緒に住んでいるのは『ルームシェアをしている男友達』じゃなくて『恋人』なんだって言いたい。恋人ののろけ話や、恋人の愚痴を友人に話したい。なんなら、恋愛のアドバイスだってして欲しい。そして、おれに恋人がいることを知って喜んで欲しい。

多分、

いやきっと、

おれがゲイだってことを伝えたら、

「なんだ。そうだったんだ。早く言えばいいのに。」と友人は言うんじゃないかと思っている。

「なんだ、じゃあ、早く言えば良かった。」そう言ってほっとしながら泣いている自分を想像して、おれはいつも涙ぐんでいる。

おれは自分に勇気がある方だと思っているんだけどな。

もし、もしも、友人がおれを受け入れなかったとしても、なんとかして立ち直れるだろうと思っているんだけどな。

けど、やっぱり今回も言えなかった。

帰宅後、恋人に「やっぱり今回も自分がゲイだってカミングアウトできなかった」って伝えると「別にいいと思うよ。しんどいことを無理にしなくてもいいよ。」と言ってくれた。

でも、おれは考えてしまう。

おれがゲイであることを黙っているという選択は、相手を欺いていることになるんじゃないかって。

でも、相手を騙していると自分自身が判断してしまうと、自分は悪い人間なのだと思いながら日々を送らなければならない。それはかなりキツいし、しんどい。

結果として、積極的に嘘をついてはいないけど、全てをあけすけに話していないだけ、だからギリギリセーフだし、おれは悪人じゃない。そう思い込もうとしている自分がいる。

でも、相手がおれを信頼してくれているのに、相手に言っていない事がある状態はすごくしんどい。

なんでおれがこんなに悩んで、苦しい思いをしなきゃならないんだって思う。

「温泉成分の何が、どこに、どういう風に作用して恋に効くのかな。そもそも恋に効くって、何?片思いの成就?恋人関係の維持発展?失恋による傷心の治癒?
いつか私も、ってことはやっぱ片思いの成就を指してる?てことは下呂温泉の主なターゲットって片思いしている層かな?友人同士はお呼びじゃないのかね?」と到着早々駅で見つけたポスターについて話していたら、友人に「相変わらず厄介な性格だね」と言われた。
中心街。古めかしいビル。こういう温泉街はワクワクする。好きだ。
一番左の猿が可愛らしくて一番好き。
マンホールに白鷺のモチーフ。下呂温泉は一度枯れ、白鷺により再発見されたという伝説があるらしい。
飛騨街道の湯之島宿という宿場町だったのか、下呂温泉。
あゆみ屋のほんわかプリン。ほんのりあったかくてめっちゃ美味しい。甘いものが苦手な友人も美味いと言って食べていた。
御菓子司たけ川の栗きんとん。しっとり、それでいてホロリな食感で、優しい甘みがとても美味しい栗きんとん。栗きんとんが好きだ。