注意:映画のネタバレがあります。
おれは映画『サマーウォーズ』が好きだ。
観賞後、昂った気持ちを持て余し、映画館から駅まで走ったくらいには好きだ。
若かったと思う。
ちなみに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を観た時も走って帰った。
若かったのだと思う。
茶臼山動物園に行ったついでに、サマーウォーズの聖地を訪ねたいというおれの希望で、ある春の晴れた日に上田城跡公園に行った。
ちなみに、上田城跡公園での目当ては東虎口櫓門である。
これは『サマーウォーズ』のヒロインの実家、陣内家のお屋敷の門として描かれている。
城跡公園に到着後、真っ直ぐに東虎口櫓門を目指した。
かっこいい門を目の前にして、
『これが!あの!!陣内家の門!!!』
という感動よりも、
『結構デカイ。これが個人宅の門であれば維持がかなり大変だな』という感想を抱いてしまった。
おれはいつの間にか、感性を何処かに置き忘れてきたおじさんになっていた。

帰宅して久しぶりに映画を観返したら、やはり面白かった。
でも、あの夜を駅までひとり駆けて帰った頃の興奮は覚えなかった。
おれは栄おばあちゃんが黒電話でみんなを励ますシーンが好きなのだが、
感動よりも
『分かる。』
という感覚になってしまったのが原因かも知れない。
「大事なのは昔のように人と人とが声をかけ合ってコミュニケーションをとること」
「あきらめなさんな あきらめないことが肝心だよ」
「これはあんたにしかできないことなんだ」
「あんたなら できる」
思えば、当時の自分は声をかけてもらう側として映画を観ていた。
それから何年も経ち、今では自分が若者に声をかける立場になった。
若かりし頃に覚えたあの興奮は、栄おばあちゃんに励まされた嬉しさに起因する感激だったのかも知れないなぁと、懐かしく思う。
励ますのって結構難しくて、優しい言葉と厳しい言葉のチョイス、声をかけるタイミング、言葉ではなく行動で示すべき場面があることなど、栄おばあちゃんから学べる点は多々ある。当時の自分はそんな気持ちでこの映画を観ていなかった。
それにしても、よくできた映画だなと思う。
登場人物に隙がないというか、みんなに役割が与えられていて、全員がそれを完璧に全うしている感がある。
安心して観られる反面、余白の無い映画と言えるかも知れない。
話は逸れるが、
劇中で台所に立つのは女性だけなのは古いなぁとか、
栄おばあちゃんが死んだ後、画面が右から左へ静かに流れるシーンは絵巻物のオマージュなのかなぁ、綺麗だなぁと思った。
話は逸れるが、
この映画には頼彦、邦彦、克彦という三兄弟が登場するが、なかなか良い。
なかなか良いと、おれの恋人も言っています。