2022年8月24日
午前3時頃まで寝付けなかったのは多分、昨日受けたマッサージの揉み返しのせい。昼前にようやく目が覚めて内腿を見てみると、ものすごい青痣ができていた。背中もひどく痛むので恋人に見てもらったが、痣はできていないらしい。次からは、マッサージを受ける前に「優しく揉んでくれ」と言おうと心に決めた。
昼はピア21のフードコートに行って食べた。恋人は念願の牡蠣オムレツを食べることができてホクホクしていた。

よく晴れていたので、恋人と一緒にワット・サケットに行くことにした。ワット・サケットは小高い丘の上に建つ寺院で、晴れた日にはバンコク市内をきれいに見渡せると聞いたからだ。教えてくれたのは、先日行った国立博物館の出口に居た警備員のおじさんだ。彼は、みるみる空が暗くなり、今にも降り出しそうな時に「これからワット・サケットに行くべき」と勧めてきたので、今思い返してみるとちょっと変な人だ。これから雨が降るのに屋根のない観光地に行けと勧めるなんて。
宿の近くの停留所から40番のバスに乗る。運賃は車掌さんに20THB(82円)を手渡し。車掌さんに「ワット・サケットに行くのだ」と言ったところ、「、、、。このバスはワット・サケットへ行かない。」と告げられる。しまった。乗るバスを間違えた。
「えーまじか。困った」と恋人と顔を見合わせていると、車掌さんが次の停留所でバスを停めて我々を降ろし、運賃の20THBも返してくれた。優しい。
降りた停留所で2番のエアコンバスに乗り、今度は目的地近くのバス停まで行く事ができた。
停留所から歩いてワットサケットまで向かったが、ひどい暑さ。太陽あんまり眩しく照らすから、酷暑っていっていいかな?






強い日差しに体力を奪われながら頂上まで頑張って登った。恋人は暑さに極端に弱いため、登頂した時にはかなり消耗していた。
頂上にあるお寺に売店があってジュースを買って一休みしていたところ、ヨーロピアンと思われるカップルが「Wi-Fiがなくて困っている。あなたの携帯電話でインターネット共有してくれないか」と言ってきた。おれは全然構いませんよ、どうぞどうぞ、と共有しようとしたところ、恋人が阻止してきた。
「知らない人とネットワークを共有するなんてやめた方がいい」
「面倒なことになったら怖い」と。
おれは「多分二度と会わない人達だし、彼らと別れた後におれのインターネット共有パスワードを変更すれば良いだけなんだから、よくない?この人たち困っているんだし、親切にしてあげても良いじゃん」と言っても、「そんなことしなくて良い」と譲らない。
結局恋人の圧に負けて、カップルには「テザリングのやり方が分からないからごめんなさい」と言って断った。
この恋人とのやりとりで、おれのテンションは下がってしまった。
恋人はちょっとした親切よりも、見ず知らずの人から被るかも知れないリスクに不安になってしまう。おれは目の前に困っている人がいるのだから、自分の可能な範囲内で助けてあげても良いじゃんと思う。
二人の性格は全然違う。

金色に輝く仏塔を間近に見ても浮かない顔をしているおれに向かって恋人が「そんな顔して。またおれの性格を責めてる」と言ってきたので、「責めているというか、、、。一緒にいたらおれが大切だと思っているちょっとした親切も止められてしまうんだなと思って。」とおれの考えを伝えた。
おれとしては責めたいんじゃなくて、二人の性格の違いにショックを受けていたと言った方が正しい。ショックを受けたというか、二人に未来があるのか不安を覚えたというか。不安というか、自信がなくなってきたというか。
この先恋人と一緒にいたら、自分が正しいと思っている、自分がそうすべきだと思っている『小さな親切』にブレーキを掛けられる。おれはおれの周りにいる人達にも『小さな親切』を大切にして欲しいと思っている。でもそれって、恋人に対しておれの考えを押し付けてもいるわけで。
でも多分、恋人も同じだろう。あまりにも性格の違う『おれ』と一緒にいると、意見は度々食い違うし、『小さな親切』の定義も、その範囲も違う。今回のバンコク旅行だって、それぞれ楽しみ方だって違う。同じものを見て、体験しても、違う感想や感情を抱いているだろう。
そんな二人がこれからも一緒にいられるのか。恋人だって不安になるのだろう。
恋人も不安になっていて、でも、これからもおれと一緒に居たいとは思ってくれているみたいだ。
仏塔の前に巨大な赤い布が置かれ、願い事を書けるようにペンが用意されていた。恋人はその布に、恋人とおれの名前を書き、Forever Loveと書き添えていた。
恋人はいじらしい。
いじらしいし、
X JAPAN
と、思った。
